ETA2010年問題の詳細
ETA2010年問題とは、2002年に同社が「エボーシュのスォッチグループ以外への供給を段階的に停止する(2010年までに)」と発表したことから始まった時計業界全体の揺れ動きの事を言います。聞きなれない言葉もあり意味が分からないと思いますので簡単に言うと「グループ外への商品(機械)の提供を、もうやめるからね!!」的な意味合いの事を言い出したというわけです。
それはつまりどういうこと?てかエボーシュって何?
エボーシュとは、エボーシュムーブメントといい「半完成状態の機械」の事をいいます。
当時、多数の時計メーカーがETA社からこの「半完成状態の機械」を仕入れて、自社でオリジナルのカスタマイズを加えてから時計に搭載し、販売するという手法でした。
そして、ETA社が「エボーシュをグループ外の会社には売らないよ!!」という発表をしたことにより、グループ外の会社には下記の選択が迫られました。
供給停止された各メーカーの対策
- ETA社以外の会社から機械を仕入れる
- 自社で機械を開発する
- ETA社から完成状態の機械を仕入れて、分解してオリジナルのカスタマイズをする
ETA社以外の会社から機械を仕入れる
現在、ETAの代替ムーブメントとして有名なのはセリタ社です。セリタ社は元ETA社の下請け会社で、特許切れしたETA社の機械を元に、流用のきく機械を製作しています。一部の会社で導入実績もあり、今後の普及が期待されています。
自社で機械を開発する
新しく機械を開発するという事は莫大な時間とコストがかかります。資金力のあるメーカーででないと、この選択は難しいでしょう。
ETAから完成状態の機械を仕入れて、分解してオリジナルのカスタマイズをする
ETA社はあくまでも「エボーシュの提供をしない」と言っているだけで、通常の完成された機械の提供は今後も続けるようです。そのため、各メーカーは、一度ETA社から完成状態の機械を購入し、それをばらして自社のカスタマイズを加える必要があります。かなり二度手間なので現実的ではありません。
まとめ
そもそも、ETAがなぜこのようなことを言い出したのか、それは当時の時計業界のあり方が大きく関係しています。
冒頭で記載した通り、当時は多数のメーカーがETA社からエボーシュを仕入れて、自分たちで加工してから販売しておりました。そのため各社は自分たちで機械を開発する必要なく時計を販売する事が出来ていました。
自社で機械を開発するのは時間も費用も莫大にかかります。それだったらETA社から高品質ムーブメントを仕入れた方が、商売的にも効率が良かったわけです。
ETA社はこの状況がスイス時計産業の発展を阻害していると判断し、「グループ外へのエボーシュ供給」決断に至ったわけです。
もちろん、グループへの参入を促したい等、大人の事情もあったのかもしれませんが、、